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BLOG岳沢小屋のスタッフブログ

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冷たい雨の中で消えていった命

この話しはこれからの冷たい雨が降る可能性のある北アルプスの秋山で、全ての登山者が遭遇する可能性のある話として読んでもらいたい

昨日、15時45分、岐阜県警から電話が入った
天狗のコル付近(岐阜県側)に遭難者がいる、天候悪く今日の救助は出来ないのでビバーグ装備を持って現場へ行って欲しいとのこと

たまたまその時は重太郎新道での遭難事故の怪我人を搬送していた長野県警と常駐隊の隊員4名が岳沢のキャンプ場まで下りてきたので、このあと小屋に泊まるか、そのまま上高地まで下りるかを協議しているところだった

そういうことなら、県警の隊員と話しをしてもらったほうが早いだろうと、県警隊員に電話を譲った

現場の隊員だけで判断できる案件でもないので、長野県警の本部と協議すり合わせをしてくれということになった。

結局、その時間から現場へ向かい救助作業を行うには時間が遅い(日没まで時間がない)、二つの案件を並行させるより、目の前の案件に決着をつけるほうが先決ということで、天狗のコルの怪我人には気の毒だがその日の救助作業は見送りということになり、16:30、長野県警・常駐隊の隊員は怪我人を背負い上高地へ下った。(その後、怪我人は上高地で待機していた救急車に引き継がれた)

そして今日、7時に岐阜県警の隊員5人が岳沢小屋を経由して天狗のコル付近の現場へと向かっていった
天候は雨、深い霧で岳沢小屋周辺も視界はまったく効かない、そんななか天狗沢を登っていった

11時過ぎ、隊員が現場に到着、遭難者の心配停止が確認された

この件については細かなことはほとんど聞いていない
稜線から約200m滑落して両腕を骨折している(らしい)と聞いただけで、単独か複数か男性か女性か年齢も具体的な滑落ポイントも聞いていない

怪我が原因で亡くなったのか、冷たい雨に打たれて低体温症で亡くなったのかも今の段階では分からない

でも、もし昨日の15:45、自分が要請された時点でビバーグ装備を持って走っていれば救える命だったのかもしれないと考えると申し訳ない気持ちが消えることはない

実際問題、岐阜県警の隊員5人で4時間かかった現場、稜線から150m下降したという現場、濃霧と小雨のなか、そこへ一人で16時から向かうというのは現実的ではないし、そんな救助作業は行うべきではないだろう

では、長野県警の隊員が向かっていれば…
それとて、天狗のコル周辺の急峻な断崖を真っ暗な中で下降していくというのは現実的ではないだろう

事故の発生時間や天候状況(濃霧+雨)から考えると、救えなかった命ということになるのかもしれない

天候が良ければすぐにヘリが来てくれていたかもしれない
そもそも天候が良ければ、岩が濡れていなければ滑って滑落することもなかったかもしれない
秋ではなく、夏なら冷たい雨に濡れて死ぬこともなかったかもしれない
遭難者自身もそんなことを考えながら命が消えていったのかもしれない

これからの紅葉シーズン、秋晴れときれいな紅葉だけを想像して夢を膨らましている登山者の皆さん、山、とくに秋山ではこういう危険があることを忘れずに山へお出かけください

今回の事例は特別なことではなく、冷たい雨に濡れて死亡するまでではなくとも低体温症になる登山者はたくさんいて、その対応に苦慮する稜線の山小屋がたくさんあるのが現実です
雨が降って、どうせ景色が見えないなら行っても仕方がないと早々に諦めるのが自らの命を守る最善の策です。

最後に、名も知らぬ登山者さまのご冥福を祈りつつ、助けてあげられなく申し訳なかったです、ごめんなさい