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BLOGあるじの視線

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2024年度の営業は終了いたしました。
お越し頂いた皆さま、ありがとうございました。
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山は暑くなっているのか

 11月6日にスタッフが下山しまして、今シーズンも無事終了となりました。お越し頂いた皆様、ご支援いただいた皆様、誠にありがとうございました。

 お陰様で今年は数年ぶりに山に活気が戻り、多くの登山者をお迎えすることができました。
これはコロナ禍による行動制限がなくなったこと、インバウンドの増加などの要因がありますが、全体的に天候が安定していたことも大きく寄与しています。

 とにかく今年の夏は暑かったですよね。私の子どもの頃は30℃を超えれば「今日は暑い!」というイメージでしたが、今や35℃を超えることも珍しくなく、30℃なら涼しい方。例年、山で本当に夏を感じられるのはお盆前後の2週間程度ですが、今年はいつもより半袖で過ごす期間が長かったです。

令和5年8月撮影
今年の夏はこうした晴れの日が多かった気がします

 山は本当に暑くなっているのか。肌感覚ではなく数値で検証してみたいと思います。
槍ヶ岳山荘と南岳小屋では以前より株式会社T&D様の協力を得て、ライブカメラと一緒に気象観測データをHPで公開してきました。その蓄積されたデータを抽出し、簡単に分析してみたいと思います。

 高校時代に数学で0点を取ったことのある文系出身の素人である私が分析したものですので、温かい目で見て頂けると助かります。また、厳しい環境下に設置されている観測装置ですので、様々な要因によりデータの欠損があります。学術論文ではありませんので、一つの読み物としてご覧ください。

 まず、8月の毎日5時と14時に観測したデータを抽出し、1ヶ月間の平均を取ってグラフ化しました。(グラフ①)

グラフ①:8月の気温推移(平均値)

 今年が最も暑かったことは見て取れますが、上昇トレンドにあるとは言えなさそうです。正直、顕著に右肩上がりの結果が出ることを予想していたので、少し期待外れですね。ちなみに、標高が100m上がると気温は0.6~1℃下がるようですが、南岳小屋は槍ヶ岳山荘より約100m標高が低いところにありますので、南岳小屋の方が高い数値が出ているのは妥当かと思われます。

 では、山ではなく街の気温はどうなっているのでしょうか。代表地点として東京と松本の月平均気温を気象庁のサイトからダウンロードしてこのグラフに並べてみました。(グラフ②)

グラフ②:8月の気温推移(平均値)

 街の気温もここ約10年の推移を見てみると、大きく上昇している訳ではないことが分かります。また、グラフの波形が街と山で同じ傾向であることが分かりますので、山小屋で観測したデータもそれなりに信頼性があると言えそうです。

 分析の仕方として、平均値で見ると天候が悪化した際の急激な気温変化等による外れ値の影響を受けて、傾向として正しく表れないのでしょうか。次に、外れ値の影響を受けにくい中央値でグラフ化してみました。(グラフ③)

グラフ③:8月の気温推移(中央値)

 平均値で見るよりも、上昇傾向にあるようにも見えます。(気のせいでしょうか?) ですが、平均値のグラフとそれほど変わらず、大きな変化がないことは確かです。今年の暑さは際立っていますが。

 続いて、9月の気温はどうでしょうか。8月と同じように平均値でグラフを作成してみました。(グラフ④)

グラフ④:9月の気温推移(平均値)

 9月の気温は上昇傾向と言っていいのではないでしょうか。最近は巷では「秋がなくなった」と言われているようですが、その肌感覚と合っている気がします。例年、山では9月の後半にもなれば気温が下がって氷が張り雪が舞うのが通常ですが、今年の初氷は9月24日、初雪は10月に入ってからでしたので、例年よりも1週間から2週間ほど遅かったです。

 続いて7月はどうでしょうか。

グラフ⑤:7月の気温推移(平均値)

 なかなか傾向は読みにくいです。7月は季節の変わり目ですし、梅雨前線の動き次第で1ヶ月の平均気温が変わってきますので、月単位の分析は難しいかもしれませんね。

 参考までに気象庁のサイトには、長期的な日本の平均気温との差が示されています。

 これを見ると、より長いスパンでは明らかに日本の気温が上がっていることがよく分かります。やはり長期的にデータを蓄積していくことは重要ですね。当社の観測データはまだ10年と少しですが、今後も観測を続けていきたいと思います。

 また、年々山の雪が減っていると感じていますが、私たちが小屋に居ない冬の気温はどうなっているのでしょうか。年間で見たら気温の分布はどうなっているのでしょうか。今後、詳しい方に相談し、もう少し別のカットで分析して、このブログで発信していきたいと思います。(時間が取れれば)

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